ISBN:4152081716 単行本 入江 真佐子 早川書房


おなじみトリイのノンフィクション物‥なのだけど
この作品は結末がない。
『ヴィーナスという子』のところで書いたばかりだけど
私はエピローグを読むことで作品の中での緊張をといていた。
ところが本書だけはそうはいかなかった。
主人公ジェイディの身に本当は何が起こっていたのか
結局明らかにはならなかったからだ。
はっきりしているのは
トリイが彼女の言葉を信じて事態を公にしたこと
それによってジェイディが両親から離れることができたこと
そしてそれが正しい選択であったということだ。

ジェイディの身に何かが確実に起こっていた。
その「何か」とは非現実的なカルト集団の存在をうかがわせた。
この日本で暮らす限り本書に書いてある事実を
ありのまま頭に描くことはむずかしい。
不自然なほど前かがみで両手を組んでるジェイディに
トリイがどうしてそんな格好でいるのかとたずねると
「私の中身がこぼれ落ちないようにだよ」
と答える‥という件がある。
この言葉に彼女の恐怖が表れていると思った。

読後ほんとうにやり切れない思いが残った。

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