グロテスク

2006年11月4日 読書
ISBN:4163219501 単行本 桐野 夏生 文藝春秋 ¥2,000

後味があまりよくない感じ‥。

「わたし」「ユリコ」「和恵」の生き様を描いてるんだけど
それぞれの視点に変わるたびに
つい感情移入してしまい疲れてしまった‥(^ー^;)

テーマになってるのは『差別』だろうか?
それも目に見えるようなわかりやすい差別ではなく
人間の心の底にはびこってる人を踏みつけようと常に窺うような気持ち。
まるでそうしなければ自分を支えられないような。。
こう書いている以上もちろん自分の中にもその気持ちはあるのだろう。
たぶんこんな裸の気持ちを『グロテスク』と表したかもしれない。

後味がよくないのは自分のなかにグロテスクな悪魔が棲んでることに気が付いたから。
それに‥
あまりにも救われない感じが悲しくなった。

他作品にも興味はあるが‥迷うところ。。
ISBN:4152080329 単行本 入江 真佐子 早川書房 ¥1,937

前作『シーラという子』を読み終えたときのもゃもゃが
やっと晴れた感じ。
そうだょね‥
前作のままだったらノンフィクションだということが信じられないと思った。
そんなにうまく行くんだったら私は何ょ!?‥ってな感じ?(^。^;)
人間‥特に子供はたくましい。
愛してくれる人保護してくれる人を求める力がすごい。
折れることなく「生きよう!」とする力が底から沸いてくるみたいだ。
そして少しずつ現実と自分に折り合いをつけて
社会に馴染んでいくのかもしれない。。
トリイに送られるまだ見ぬ母宛の手紙には泣かされた。
シーラは立派に「折り合い」をつけたんだと思った。

プラナリア

2006年9月18日 読書
ISBN:4163196307 単行本 山本 文緒 文藝春秋 2000/10 ¥1,400

短編集。
各話「無職」がテーマになってるのかな?
(「どこかではないここ」は微妙だけど‥)

「プラナリア」
 屈折して人とずれているのではないかと不安に思う主人公に共感。
 ただ‥乳がん患者という設定にあまり意味を感じなかったんだけど?
 山本文緒作品の登場人物に多いキャラだけど
 葛藤はするけれど結局「自分」を曲げないで行動する姿にあっぱれ!
 うらやましいなぁ。。

「ネイキッド」
 離婚をきっかけにおちぶれる(?)主人公。
 一生懸命やってきたはずなのに理不尽にも思える夫の浮気。
 力なく浮いてるような生活の中で現実を避けていたのに
 チビケンの登場で自分の気持ちに向き合うことになったのかも‥。  
 小さなコを抱きしめて涙を流すラストがすごく気に入った。。

 この話が一番好き。

「どこかではないここ」
 設定は自分に一番近いはずなのに全く共感できない作品。
 何も残るものがなかった。
 すいません‥

「囚われ人のジレンマ」
 見てしまった真実→自分の本心に気づく という感じ。
 
「あいあるあした」
 めずらしく(?)男性が主人公。
 これまた屈折。
 コトが起こらないと人を想う気持ちに気づかない。
 ‥当たり前か?
ISBN:4001156768 単行本 内藤 濯 岩波書店 2000/03 ¥1,050


『シーラという子』の中に本書を引用した部分があって
読んだことなかったのが悔しくて図書館で借りて来た。

「大人のための童話」とはよく言ったもので
なるほど忘れていた何かがあるんだなと思った。
読んでいて感じたのは
「子供」というものはなにかふわふわした綿(?)みたいなもので包まれていて
「大人」になるとその綿がだんだんはがれて行くようなもので
それが「王子さま」の言う「つまらないもの」になって行くことなのかな‥と。

「心の目」
むずかしいけどわかるような気がする。
「大人」になっちゃうと見えなくなっちゃうものってある‥。
ISBN:4152079991 単行本 入江 真佐子 早川書房 1996/03 ¥1,890

一時期この手の本が本屋さんに平積みされてるのを横目で見て
何度も素通りしていた。
もともと天邪鬼でベストセラーものには手を出したくないってのもあるんだけど
まぁいろいろあって『幼児虐待』ものは敬遠していたというのがホントのところ。

一口に『幼児虐待』とは言っても程度や内容の差もあるし
被虐待児に表れる症状(?)も千差万別。
シーラのように攻撃的になるのってめずらしいような気がするのは私だけ?
もちろん扱ってる内容だけに
胸が詰まるようなことや闇に光が差し込むようなほっとさせるような部分もある。
それなのにどこかあっけなく感じてしまった。
‥と思ったら続編があるじゃない?
どうやらそっちでこのもの足りなさは解消されるような気がする。
本書で「星の王子さま」を引用する部分が印象的。
愛情のやりとり‥信じる気持ちなどをうまく表していると思う。
‥あぁそれなのに恥ずかしながら「星の王子さま」を知らない。。(〃_ _)
ちゃんと読んでおこうと思う。

幻視鏡

2006年7月28日 読書
ISBN:4575508241 文庫 吉村 達也 双葉社 2002/05 ¥580

自分がおかしくなってるのではないいか?‥という恐怖に追い込まれるのがおもしろい。
主人公を追い込む二人の意図がいまいちぱっとしないけど
その準備なり実験っぽい部分は興味深い。
異形なものや超常的な恐怖より
精神的に追い詰められる恐怖のほうが現実的でおもしろいのかもしれない。

i(アイ)レディ

2006年7月28日 読書
ISBN:4041789613 文庫 吉村 達也 角川書店 1999/08 ¥820

半分くらいまで読んだとき正直「ん〜陳腐?」と感じてしまい
最後まで読もうかどうしようか迷ったほどだった。
でも途中2段構えのオチだったことがわかって最後まで“一応”楽しむことができた。
ただ‥本編とは関係ないのかもしれないけど
この父親像ってどうなんだろう?
息子との衝突ってのはあるんだろうけど
『娘はかわいいけど息子はかわいくない』と言い切ってしまうのはどうかな?
主人公でありながら好感がまったく持てない。
そのせいかただでさえ現実離れしてる話なのに
漫画チックになってしまってるように思う。
それが狙い?思う壺?
でも個人的にはあまり薦められないかも‥?(失礼!)

卒業

2006年7月8日 読書
ISBN:4041789710 文庫 吉村 達也 角川書店 2002/03 ¥480

三部作の一作目らしく読み終えた感じがしない。
‥って言うより「え?」って感じで終わっている。
二作目を読めということかな?(笑)
こういうのを哲学ホラーと言うのか‥好みな雰囲気。
人間にはもともと人格なんてない‥とか
生まれながらにプログラミングされてる‥とか
それっぽい話は大好き。
欲を言えば復讐の殺人や解体(!)作業を
より詳しく描写してほしかったな‥と。。
ま、そういう世界なんだろうけど
個人的にそんな部分も好みだったりするわけで‥( ̄∇ ̄*)ゞ
機会があったら次の『樹海』も読んでみようと思う。
(買ってすぐに読みたいとまでは思わないという意)
ISBN:4048730053 単行本 山本 文緒 角川書店 1997/01 ¥1,470

短編集。

山本文緒作品らしいものばかりのなかで
主人公が男性のせいかな?『ドーナッツ・リング』が印象に残っている。
こんな男性の純粋さを感じるとほっとする感じ。
女性の本音を見せられるものが多い中で
男性の共感も得られるんじゃないかな?

正直‥個人的には長編モノのほうが好き。

父親

2006年6月8日 読書
ISBN:406184413X 文庫 遠藤 周作 講談社 1989/04 ¥700

時代のせいでもあるけど
微妙に現実離れしているような気がした。
絵に描いたような幸せな家族が
娘の不倫(?)‥その娘を思う父も会社での派閥問題などに苦悩する。
私は不倫の経験はないけど
いままで特にいけないことと感じたことはなかった。
周りに迷惑をかける‥とはわかってはいたけど
その「周り」には両親もいるということは
本書を読むまで気づいてはいなかった。
私(たち?)の場合は正直例外なのだろうけど
娘を思う父親の気持ちの深さには打たれるものがあった。
ISBN:4915512576 単行本 松岡 佑子 静山社 2006/05/17 ¥3,990

この読書記録を書くのはちょっと迷った。
私はおへその位置が人様とは違う位置にあるらしく
いわゆるベストセラーものには絶対手をださない人間。
本屋さんの平積みは素通りするタイプ。
でもハリポタだけは例外だった‥
くやしいけどどっぷりはまってこの六巻もずいぶん待ち遠しかった。
‥で 以下読書記録。(笑)

今回ほど次回への謎を含んだ話はいままでになかったと思う。
スネイプの立場‥ ダンブルドアの最後のセリフの意味‥
そして本当に死んでしまったのか???
シリウスのことだって信じられないのにダンブドアまで‥?
でも‥
「半純血のプリンス」が誰だったかはちょっと意外性が薄かったかな?
学科と書き込みの内容からして当然‥
そう思わせておいて実は!‥を期待していたんだけど
期待はずれだったみたい。
あとはロン&ハーマイオニーの今後が楽しみ♪

恋愛中毒

2006年5月30日 読書
ISBN:4041970105 文庫 山本 文緒 角川書店 2002/06 ¥600

まず書いておかなくてはいけないことは
「主人公(一人称)が途中で変わる」というコト。
なんか自然だったのだけどやっぱり「え?」と感じさせる効果はあったと思う。

さて‥やっぱり山本文緒!
男の方にとってはホラー小説と言ってもいいのかも?(笑)
ここまで執着できるものなのか‥。
この作品を読んで思ったのだけど
ストーカーという人種は必然的にそうなるのじゃないかな。。
自分と相手‥必要なのはそれだけ。
相手の目に映る自分は見えない。
でも最後でほっとできた。。

いよよ華やぐ

2006年5月12日 読書
ISBN:4103112131 単行本 瀬戸内 寂聴 新潮社 1999/03 ¥1,680

齢を重ねた女性たちを
過去の恋を振り返りながら描いた小説‥といったところ。

恋というのは決して自分たちだけの世界の出来事ではないということ。
自分の意思だけで恋の運命は決まらないということ。
性を必要としない恋もあるということ。

いい歳してなんだけど
私は恋したことがあるのかな‥なんて思ってしまった。
たぶんないのかもしれない。
正直‥苦しい恋をしなくてよかったと思ってる。
これからもしたくない。

「瀬戸内寂聴」に性の描写は付き物だけど
この小説でははじめて嫌悪感をおぼえた。
読みきれてないのかもしれないけど
それならそれでもいい。

落花流水

2006年4月29日 読書
ISBN:4087474984 文庫 山本 文緒 集英社 2002/10 ¥500


手毬の一生を10年ずつ区切って
まわりの誰かの視線で書かれている形態(?)が新鮮だと思った。

読後浮かんだ言葉は「輪廻」。
自分がどう拒絶しようと道は決まってるものだと思った。
それも「血」によって決められてるものなのだと。
山本文緒らしさなのかもしれないけど
「女」には怖い部分があることを思い知らされる。
男の方はどう読むのかな?

暗黒童話

2006年4月9日 読書
ISBN:4087476952 文庫 乙一 集英社 2004/05 ¥620


やっぱり大好き乙一作品。

描写だけのことを言えば残酷なシーンが多いのだけど
それがさらっとしてるところが乙一らしさ。
いくら肉を切るとか裂くとか言っても
人間が人間の心を傷つける残酷さを考えたら
大したことないような気さえする。

「臓器提供者の目からさまざまな記憶の映像を見る。」

背表紙のあらずじに
「チープだな‥」と思ってしまったとをお詫びします(笑)
気持ちよく裏切ってもらってよかった。

そういえばめずらしく長編。
でもそれを感じさせないくらい一気に読んでしまった。

きっと君は泣く

2006年4月1日 読書
ISBN:4041970032 文庫 山本 文緒 角川書店 1997/07 ¥546


「和也さん読んでみましたょ〜(o^∇^o)ノ」Part2(笑)

気に入ってまた手にしてみた山本文緒作品。
読後最初に思ったこと‥
「人って裏と表があるんだなぁ〜」(当たり前だけど)
『何か』が起こってはじめて現れる裏の顔。
もちろんそれは自分にもあって。。
椿は感情移入しにくいキャラだけど
そこは上手に描かれてて決して憎めないようになってる。
人物の書き分け(描写?)は最高!
個人的にはおばあちゃんが好き♪

紙婚式

2006年4月1日 読書
ISBN:4041970091 文庫 山本 文緒 角川書店 2001/02 ¥560


「和也さん読んでみましたょ〜(o^∇^o)ノ」

山本文緒作品初体験。
男女のかかわり(結びつき?)の不思議さを感じさせるのがねらいだと思うんだけど
実は一番気になったのは
「本当の自分」に気がつかないもどかしさみたいなもの。
他の作品は読んだことないからわからないけど
山本文緒作品の特徴なのかな?
確かに実生活でもあるような‥
何でもないようなふとした『何か」をきっかけに
自分の本心に気がついて逆に驚く‥みたいなこと。
『子宝』に出てくる毛蟹の「知床ちゃん」
思わず電車の中で吹きだしてしまった(^。^;)

愛のまわりに

2006年4月1日 読書
ISBN:4087485269 文庫 瀬戸内 寂聴 集英社 1996/10 ¥520


『愛』を軸にした法話をテーマごとにまとめられていて
実例問答が特に興味深い。
小説以外のものはあまり読まないけど
瀬戸内寂聴というだけで手にした。
テーマはいろいろだけど『家族の価値』の章が考えさせられた。
子どもに対する思い‥叱るということ‥。
私は「家族」を求めて結婚したつもりだったけど
本当にそうだったのかな・・と。
子どもを産みたいと願って幸いその願いはかなったのだけど
“命”を育ててることの重みは‥などなど。。

GOTH 僕の章

2006年4月1日 読書
ISBN:4044253056 文庫 乙一 角川書店 2005/06/25 ¥500


『夜の章』では正直「いまいち?」という印象だったけど
謝りたい‥(笑)
やっぱり『夜の章』『僕の章』二つあわせて読むべきなんだと思った。
まず読後感が独特だった。
すっきりしたようで‥なにかつかえているような不思議な感覚。
この作品のわかりやすい異質さは主人公「僕」の名前が出て来ない点だけど
名前が明かされるころからより人間くさくなってほっとしたかな?
(別に人間離れしててもそれはそれでよいのだけど‥)
「森野夜」は『夜の章』のほうが魅了的だったかなぁ。。

GOTH 夜の章

2006年4月1日 読書
ISBN:4044253048 文庫 乙一 角川書店 2005/06/25 ¥460


やっぱり大好き乙一。

少々残酷な描写あり。
でも‥「森野夜」同様スプラッター好きの私には物足りない。
こういう部分が乙一なのかもしれない。
描写は残酷なはずなのになぜかさらっとしてる?
「僕」のキャラのせいなのかな?
『記憶』はちょっと・・乙一作品でははじめてのがっかりモノ。
わかっちゃってる以上に描写もつまんなかったかも。。

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