さまよう刃

2010年1月13日 読書
 東野 圭吾(角川文庫)


簡単に言えば
犯罪に巻き込まれて娘を殺された父(長峰)の復讐の話。

きのうまで犯罪とは縁のない普通の生活を送って来たのに
悲劇の日を境に世界が変わる。

小説ってふつー感情移入して読み進めていくものだけど
これは少し違うのかも。

犯罪そのもののキツい描写もそうだけど
主犯格の少年の背景もあんまりわからないままで
少し消化不良?っぽい。

長峰を助ける(共感する?)和佳子のココロの変化も読みにくいし

最後のなぞの部分になっちゃうけど
久塚刑事の行動の意味も弱いような。。

とにかく読後すっきりしないことばかり‥。

 山本 文緒(幻冬舎文庫)


読後‥涙が出た。
私にはよくあることだけど
それがどういう感情なのか自分でもよくわからない。

筆者独特の病んでる系の話なんだけど
さすがにココまで入り組んでると重苦しい。

どの家庭にも黒い部分はあるんだろうけど
一部自分と重なる部分があって苦しかった。

間にカウンセリングの様子(?)が挿入されてるんだけど
これが謎解きのようになっていて効いてる。

最後の挿入部分。
すべての謎が解かれたあとなんだけど
この部分のおかげで
ひとつ光がさしてるようでほっとさせる。

アカペラ

2009年7月13日 読書
 山本 文緒(新潮社)


これ‥復帰作になるわけだけど
ん~微妙???
山本 文緒っぽくないっゆーか
独特のいじわるな感じ(毒っていうのかな)がいまひとつ‥かも。


『アカペラ』
 3作中いちばん好き。
 「たまこ」は山本 文緒作品にありがちな
 純粋でひねくれてるようなコ。
 そこが魅力的。
 最後はほんと切なかった‥
 「たまこ」が信じてたおじいちゃんの愛が
 本当は「たまこ」へではなかったという残酷な結末。
 それを「たまこ」は責めることもできなくて‥。


『ソリチュード』
 いい加減で逃げてばっかりのダメ男。
 それでいて純粋だから憎めない。
 里帰りの間の出会いと出来事で
 38歳にしてオトナに近づいた?


『ネロリ』
 ちょっと‥好きじゃない(笑) 
 なんてゆーか‥変になまなましい感じがして。
 ココアちゃんの健気さに救われる。

陰日向に咲く

2009年6月29日 読書
 劇団ひとり(幻冬舎文庫)


えらそうに言うと期待してなかったのに
意外とおもしろかったかも。
短編集でありながら全部つながってるお話。
発想っていうのか設定はおもしろいんだけど
短編だから仕方ないのか
話が急展開すぎてねらいすぎって感じは少しした。
あとがきが一番よかったりしてww
いや皮肉とかじゃなくて
お父さんの愛?を素直に感じられたから。
 乙一(ミステリーランド)


えっと‥
乙一作品ではじめてかもしれないんだけど
途中までテンポが悪くて(?)
読み進めるスピードがいつもよりかなり遅かった。
ロイズの正体が割れたあたりから
俄然引き込まれて
そのあとは一気に読み上げたって感じ。
一番気に入ったのはドゥバイヨルのキャラクター。
だいたい‥
主人公のリンツに謎解き(終盤は置いといてw)をさせないで
この魅力がないんだかあるんだかわかんないドゥバイヨルに
ストーリーを引っ張らせるところがよかったかな。
おもしろかったけど‥
個人的には乙一作品のなかでは結構下のほうかも。

 乙一 (角川スニーカー文庫)


『Calling You』
『傷-KIZ/KIDS-』
『華歌』

上2作品は以前読んだ『失はれる物語』に収録されていたので
今回は『華歌』の読書記録だけ書く

(言い訳)
 実は『失はれる物語』の読書記録をupしてないことに気がついて
 今回まとめて書こうかとも思ったんだけど
 ずんぶん時間たっちゃってるし‥ねぇ(苦笑)



『華歌』
 乙一お得意の切ない系のお話。
 『GOTH』の「犬」みたいないわゆる叙述トリックってヤツですね。
 母へのわだかまりとそれ以上の愛のために
 苦しみ迷う“私”。
 病院で見つけたミサキ(の娘)の歌う花との関わりで
 母との絆の強さを知る。
 いくら傷つけても傷つけられても
 それで終わってしまうわけではないのが親子の絆。 
 ‥なんだろうけど
 個人的には少しキレイゴトっぽいような気もした。
 切れてしまうわけではないのだろうけど
 それは“血”のせいであって
 わだかまりが綺麗に消えるわけでも流されるわけでもないはず。 
 単純に逃げられないだけ‥なのでは?
 乙一(集英社文庫)


『A MASKED BALL』
 何が面白いってこの設定!
 トイレの落書きっていう古典的?で些細なイタズラから
 思いも寄らない事件へと発展していく。
 人の中に渦巻いてるものは外見では決してわからない。
 一番印象に残った登場人物は前川。
 主人公や掃除のおばちゃんよりも小気味よかった。


『天帝妖狐』
 乙一らしい作品。
 いま思い返しても涙がにじんでくる。
 こういう読後に胸が苦しくなるような話って
 ほんと乙一らしいって感じ。
 人の心のちょっとした弱さのせいで
 考えられないような大きな闇に飲まれてしまう‥
 終わることのない命の恐怖と永遠に続く懺悔と後悔。
 何でもない普通のことが実は手に入れることが難しい幸せ。
 内容が違うジャンプJブックスの方も早く読みたい。
 

パコと魔法の絵本

2008年10月29日 読書
 関口 尚 (幻冬舎文庫)


映画紹介を観て本屋に走った。
映画館はニガテ‥なんでね。

登場人物のキャラクターが皆はっきりしていてわかりやすい。
タマ子の登場シーンなんて
新幹線の中だっていうのに噴出しちゃったww
‥でも
読み進めて行って大貫がパコと出逢い
今までの自分を省みて涙を流し
浅野先生に涙の止め方を聞く件で
こんどはほんとに涙が止まらなくなって
人に見られるんじゃないかと恥ずかしかった‥ww
いまでもストーリーを思い返すとグッとくる。
映画‥観てみようかな。

ZOO〈1〉

2008年10月29日 読書
 乙一(集英社)


『カザリとヨーコ』『SEVEN ROOMS』『SO-far そ・ふぁー』
『陽だまりの詩』『ZOO』の5作品を収録した短編集。


『カザリとヨーコ』
 まぁ‥この作品に限らずだけど
 乙一作品は読み進めるのが苦しくなるものがある。
 それがまた「怖いもの見たさ」的な感じで惹かれる要因でもあるのだけど。
 この作品もそんなひとつ。
 双子のひとりだけが可愛がられ もうひとりは虐待される。
 最後の展開は読めないでもなかったけど
 「仕返し」として気持ちいいと取るべきなのか?
 結局は母親の愛は得られないままなのに?

『SEVEN ROOMS』
 読後‥緊張から解かれてホッとした。
 ホラー(特にスプラッター)は得意だけど
 日一日と恐怖が迫る感覚は私には新鮮で神経が尖った。

『SO-far そ・ふぁー』 
 設定は面白いと思った。
 少し複雑で‥後味が悪い。
 子供のココロをいじるオトナ(両親)が単純に許せない。

『陽だまりの詩』
 オチが読めた‥かな。 
 それでもロボットというカタチを借りて書かれている
 愛を理解して行く課程?が面白かった。 
 切ない。

『ZOO』
 「犯人」自身の狂人的な犯人捜し。
 この本の中では一番ぼやけた作品かな?

平面いぬ。

2008年9月20日 読書
平面いぬ。
乙一 (集英社)


「石の目」「はじめ」「BLUE」「平面いぬ。」の4作品を収録した短編集。

『石の目』
ギリシャ神話?の“メデューサ”のような話。
「女」の正体はわかっていながら
結末にたどり着くまでの葛藤が面白かった。
最後は乙一らしい切なさで胸がいっぱいになる。

『はじめ』
想像から幻覚そして実在?してしまう「はじめ」。
「私」の頭の中から作り出された「はじめ」が
「私」を想うようになりその気持ちを抑えて
仲間として接する時間を選ぶところが‥らしかった。

『BLUE』
この中で一番好きな話。
意思をもったぬいぐるみたちのなかで
ただひとり?阻害される「BLUE」。
それでも純粋な気持ちのまま居場所を求めそして見つける。
でもそのときには‥
作者お得意の分野。

『平面いぬ。』
体の上?で動き回る刺青の犬ポッキー。
極端な境遇のなかでポッキーと関わりながら
家族の愛情に気づくようになる。
最後の手紙には乙一らしくなくホッとさせられる。

錆びる心

2007年8月8日 読書
ISBN:4167602032 文庫 桐野 夏生


6作の短編集。

少し前に読んだものなので
当時の読後感を表現しきれないかも‥。

印象強い作品は『月下の楽園』

ひとにはそれぞれ他人には理解できないこだわりがあるものだけど
その嗜好のために命までなくす男の話。

そこまで?‥ってなこだわりだけど
わからないでもないのところが自分でも不気味。
男性的な考え方なのかな。

『虫卵の配列』

妄想と現実の境がなくなってしまった元生物教師の話。

山本文緒作品少し似てるかな?
異常なまでの妄想で周りを混乱させるのだけど
彼女の知的で凛としたところとか
なぜか共感してしまう。
彼女の語る純粋で危険な「愛」が美しく描かれてる。

地球へ…

2007年5月16日 読書
ISBN:4757520093 コミック 竹宮 惠子 スクウェア・エニックス 2007/04/06 ¥650

あぁ‥なつかしいぃ‥(=^ー^=)

アニメ化されたって知ってあわてて観だしたのが第2話Σ( ̄□ ̄;) 
‥まぁいいけど。。
あっと言う間にあの頃の自分にもどって
夢中になってしまった(^ー^;)

当時は「無茶な‥!?」的な発想にド肝を抜かれたけど
逆にいまはそこがある意味幼稚なのかもしれない。
あ‥決してバカにしてるんじゃないですょ?(^。^;)
それが証拠に‥
Amazonで単行本取り寄せちゃいましたからっ!( ̄∇ ̄*)ゞ

真面目なお話‥
SF物とはいえ異端なものを排除しようとする考えとの戦いが
どこか宗教っぽいニオイもする。。
ISBN:4087751767 単行本 山本 文緒 集英社 ¥1,835

作者得意の不倫もの?‥と思うとそうでもない?

目の前の本当の幸せに気づくことなく
その不幸(?)を誰かに責任転嫁し
自分勝手な想像上の幸せを求めて逃げる。
そんな人たちのお話かな。。

人物の書き分けがすばらしい。
特に茄子田氏。
よくこんなに好感度最低に書けたもんだ!(^。^;)
そして綾子。
こーゆーちょっと危ない依存女を書かせたら作者が一番だと思った。
それにしても真弓。
個人的に腹が立つほどもったいない‥(ーー;) 
わざわざ「外」に出る意味があったのか?
私なら喜んで家にいさせていただくのに。。(←愚痴?w)
秀明。
(私の身近にも)たしかにこういう人間いる。
優しい=自分がない。
この小説の中の出来事でみんながそれぞれ成長したのだろうけど
そのなかで秀明が一番むずかしいところなんじゃないかな?

(追記)
秀明が真弓に敗北宣言したときの件。

秀明は自分の中から、何かがなくなってしまったのを感じた。
子供の頃には、大きな固まりだったもの。
・・・・・・・・・・

これはみんなあるんじゃないかなぁ。
そうすることで生きやすくもなるんだし‥

このこと↑を書こうと思って忘れていたので追記した。
(追記するようなことでも…)
ISBN:4087472043 文庫 山本 文緒 集英社 ¥480


なんらかのストレスが原因の心因性の病気がテーマの短編集。

どのお話も女性は(なら?)少なからず共感できる部分があるんじゃないかな?
タイトルになってる『シュガーレス・ラヴ』は特に面白かった。
ついたウソにおびえる“正直な”自分。
結果が出てしまったら案外それまでのことだったりして‥。
なるほどな〜って思った。
ところで‥
チョコレートの成分のPEAが恋したときに脳内で作られる化学物資と同じだって?
ちょっとネットで調べてみた。
なるほど‥恋愛物質だって!
これからはチョコレートが主食だなんて人に言わないでおこ‥( ̄∇ ̄*)ゞ
ISBN:4152081716 単行本 入江 真佐子 早川書房


おなじみトリイのノンフィクション物‥なのだけど
この作品は結末がない。
『ヴィーナスという子』のところで書いたばかりだけど
私はエピローグを読むことで作品の中での緊張をといていた。
ところが本書だけはそうはいかなかった。
主人公ジェイディの身に本当は何が起こっていたのか
結局明らかにはならなかったからだ。
はっきりしているのは
トリイが彼女の言葉を信じて事態を公にしたこと
それによってジェイディが両親から離れることができたこと
そしてそれが正しい選択であったということだ。

ジェイディの身に何かが確実に起こっていた。
その「何か」とは非現実的なカルト集団の存在をうかがわせた。
この日本で暮らす限り本書に書いてある事実を
ありのまま頭に描くことはむずかしい。
不自然なほど前かがみで両手を組んでるジェイディに
トリイがどうしてそんな格好でいるのかとたずねると
「私の中身がこぼれ落ちないようにだよ」
と答える‥という件がある。
この言葉に彼女の恐怖が表れていると思った。

読後ほんとうにやり切れない思いが残った。
ISBN:4152084251 単行本 入江 真佐子 早川書房

おなじみトリイのノンフィクション物。

今回はかなりトリイを悩ませたと思える少女‥ヴィーナスのお話。

彼女だけでなく彼女の家族(&同居人)すべてに問題を抱えている。
何かの影を感じながらそれを確信できないトリイ。
彼女が身を守るために自ら作った殻の硬さ‥
人間の心って本当に複雑で奥の深いものだと思った。

あと‥
単一民族である日本人にはとうてい理解できないジュリーの考え方にも驚かされた。
考えすぎることが逆に人種差別の考え方を押し付けることにはならないのだろうか?
↑これ素朴な疑問。

彼女のノンフィクション物にはエピローグがある。
じつはこれを読むことで本文の緊張がすっと緩められてほっとする。
途中どうにもやり切れなくなったとき
どうしてもこの部分を先に読んで安心してしまいたくなるほど‥
この気持ちを味わいたくてトリイの作品を読み続けてるような気がする。
ISBN:4041970024 文庫 山本 文緒 角川書店 ¥483


NHKでドラマ化されていたのでタイトルに記憶があった。
山本文緒作品で最初に読もうと思ってたはずだったのに
なんとなくずいぶんあとになってしまった。

どこでキリにしていいかわからないほど引き込まれた。
ホラーじゃないの?ってくらい怖いんだけど
途中でやめられない。

自分のドッペルゲンガーに出逢う
‥ここまでだとなんか陳腐なミステリーって感じなんだけど
妊娠することによって
本体とドッペルゲンガーが入れ替わってしまうという発想(?)が
とても奇抜だったと思う。

幸福も不満の素‥不満も幸福の素。
そういうことなのかもしれない。
生まれかわってやり直したい‥そう思っても
やはり同じ人生を歩んでしまうのかもしれない。
だって‥自分はかわっていないんだもの。。

霧のなかの子

2006年11月23日 読書
ISBN:4152086300 単行本 入江 真佐子 早川書房 ¥1,890

おなじみトリイのノンフィクション物。

無言症のセラピストとして働くトリイ。
カサンドラ、ドレイク、ゲルダの3人の患者(?)の同時進行のお話。

カサンドラとの遣り取りに感情移入してしまう。
心の中の「困った場所」の部分。
鍵をかけてしまい込んでしまった怖い出来事も
話すこと‥外に出すことによって「思い出」として処理できるのだということ。
私は自分でその機会を作っておきながら逃げ出してしまった。
それほど鍵をあけるということは怖いこと。
眉をひそめるくらいイヤなタイプのカサンドラだったのに
いつか心から応援し励ましていた。

ドレイクの母親の気づかない虐待。
弱者である自分(と夫)を守るために
小さなドレイクの障害に事実に目を背ける。
トリイの辛抱強い説得で
ドレイクの心がつぶされる前に間に合ってほんとによかったと思った。
ISBN:4152081090 単行本 入江 真佐子 早川書房 ¥2,100

虐待の果てにほとんどすべてのものに怯え
誰とも口を利かない少年ケヴィンが主人公。
おなじみトリイが彼のセラピーを担当して
彼が巣立って行くまでの記録なのだけど
合間にトリイを取り巻く人たちも登場して
その遣り取りもまたケヴィンの成長の記録に
なにか隠し味的なものを加えているように思った。

恐怖心だけでなくその奥に隠されてる憎悪や攻撃心。
肉体だけでなく心まで踏みにじられて
まもってくれるはずの母親に捨てられて
トリイでさえもケヴィンはもう無理なんじゃないかと思ってしまった。。
彼の人生はリセットされるべきだと
彼の暗黒の時代の記録を抹消したソーシャルワーカーの勝手な考えに
震えるほどの怒りを感じた。

彼が自分で自分をあきらめてしまって
「おかしいままでいたほうが楽なんだょ」と言ったとき
本当にそうなのかもしれないと思ってしまったのは
私だけではないのかもしれない。

生まれ変わってからの時間より
暗黒の時間のほうが長かったのだから
ケヴィンの苦しみはまだ終わってないのかもしれないけど
心から彼を応援したいと思う。
できることならその後の彼も見てみたい。
ISBN:415208569X 単行本 入江 真佐子 早川書房 ¥1,365

トリイの作品の中でこれはノンフィクションのもの。

子供向けらしくわかりやすいと思う。
‥なのにディヴィッドとマブが育てるフクロウの描写が
細かく丁寧に描かれてるのが印象的。
二人のやりとりはもちろんだけど
トリイの言いたいことは
里親のおばあちゃんのわかりやすい言葉で表現されている。
デイヴィッド自身ががあきらめかけていても
彼の遅い言葉を待ち耳を傾けるおばあちゃんの姿がとてもいい。
最後のおばあちゃんの告白はちょっと重かったかな。
「あのときああしていれば‥」
でも戻れない‥
『起こってしまったことは選ぶも選ばないもない。
でも、次に何をするかは選べるよ』
おばあちゃんのこのセリフはココロに残しておこう。

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